11人いる! / 萩尾望都

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ストーリー star5
キャラ star3
絵の魅力 star3
演出 star4
個性 star5
中毒度 star4
おすすめ度
(総合)
star4

皆さん、昔のマンガ読みますか。私は読みます。
今回レビューするこの作品は、「昔のマンガ・ザ・ベスト」と呼ぶにふさわしい逸品です。すなわち「キング・オブ・ザ・昔」といっても過言ではありません。
つまり昔のマンガに特有の怪しい雰囲気、独特のタッチ、作者の力量、世界観、妙に心に残る読後感、そんな要素をことごとく併せ持った作品だということです。

萩尾望都『11人いる!』が連載されていたのは1975年。今から34年も昔のことです。
この作家は他に『ポーの一族』や『トーマの心臓』などで有名ですが、「少女漫画界の女王」を名乗るにふさわしい大御所先生です。
その萩尾望都先生が生み出したSF短編漫画。
まず驚くのは、民族の分類や惑星の公転周期など、SFとしての世界設定をきちんと行っている点です。少女系のSFで設定がしっかりしている作品は少ないですし、特に短編となるとその辺りのことはすっ飛ばしてエルフや魔法などが出てくるマンガが多い昨今、この姿勢は他のマンガ家にも見習って欲しいところ。
もちろん世界設定がしっかりしていた方が感情移入もしやすいわけです。設定の有無は、その設定が科学的に信用できるかどうか、理解しやすいかどうかは問題ではなく、単に「設定がある」ということで安心して読むことが出来るという、読者の無意識下の安心感につながっていると思います。

『11人いる!』はSFですが、サスペンスでもあります。宇宙大学への受験生が最終テストを受ける。会場は宇宙空間にある見知らぬ宇宙船。そこに現地集合した受験生たちがヘルメットを取ろうとした時、受験生の一人が叫びます。
「おい! 一人多いぞ、十一人いる!」
いやー、物語の導入としては完璧じゃないでしょうか。
受験生たちは53日間をその宇宙船の中で過ごす必要があり、脱出ボタンを押せば連帯責任で全員が失格。なので協調性が問われるわけですが、そんな状況で11人いる!わけです。
なぜ一人多いのか。
それは誰で、目的は何なのか。
受験生たちはお互いに疑心暗鬼に陥り、密室の心理戦が始まります。
もうこれは設定勝ちかも知れません。
そんな状況、面白いに決まってるでしょ。

絵柄はやはり数十年前のものですので、古いです。ただし、古いからと言ってダメなわけではありません。絵が好きじゃないしィ~という不幸な人はそのままスルーして下さい。そうではない賢明な人は読んでみましょう。古さなんて全然気になりません。
むしろ、その時代特有のコマ割りやカットのアングル、テンポなど、逆に新鮮な空気を感じると思います。私が古いマンガを愛しているのもその雰囲気が好きだからというのが理由です。
今のように大ゴマで魅せたり、大量のコマを使った演出を乱用することはなく、実にテンポよく、しかも濃厚に詰め込まれた物語が進行します。おそらく『11人いる!』を現代の書き手がリメイクすれば、たぶん単行本5巻分くらいになると思いますが、これは文庫サイズの半分です。
短い時間で「なんかえらいもんを見てしまった…」という読後感を覚えたい人には超オススメです。

ちなみに今回紹介している文庫バージョンでは、『11人いる!』の他に、その続編というかアナザーストーリーとして『続・11人いる! 東の地平 西の永遠』という短編が収録されています。分量的にはちょうど半分くらい。
これは『11人いる!』の世界観やキャラクターを引き継いではいるのですが、SFというよりも政治マンガに近い感じです。前作に登場した若き王と、彼の国にまつわる権力争いの話って感じ。そんな題材もさらりとこなすのが萩尾望都のすごいところだと思います。

以上、萩尾望都『11人いる!』の感想でした。
ていうかこの作者、タイトルの付け方が抜群にうまい。

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