風の谷のナウシカ / 宮崎駿

【送料無料】風の谷のナウシカ7巻セット
ストーリー star5
キャラ star4
絵の魅力 star4
演出 star3
個性 star5
中毒度 star5
おすすめ度
(総合)
star5

最初に言っておきます。
この漫画は、私などが気軽にレビューしていいものではなく、確実に人類史に残る作品であると思います。
たかがマンガに何を大げさな、
そう思う人は、きっとマンガ版を読んでない人だと思います。 宮崎駿『風の谷のナウシカ』全7巻。
もはや説明不要の国民的作家が描いた、国民的アニメーション映画の原作です。

この原作を知っている人がアニメしか知らない人に向かってよく言うのは、「映画は最初の1.5巻分で終わってて、マンガはその後の話があるんだぜー」というセリフです。
まあそれは事実なんですが、そんなことは正直どうでもよろしい。
問題はそこではない。
アニメのナウシカが子供から大人まで楽しめる「宮崎アニメ」であるなら、その原作である漫画の内容は「完全に成熟した大人のみを相手にした、排他的な姿勢で描かれる教典のようなもの」と言えるでしょう。 両者にはそれくらいの違いがあります。
なので私は「原作のマンガ読んでないの? じゃあ読むべきだよー」とは言いません。アニメの雰囲気を求めて読めば、必ずと言っていいほど裏切られるからです。悪い意味で。
例えるなら、動物園のふれあいタイムで流血事件が起きるようなもんです。ショックです。ナウシカに憧れてる男子や、クシャナに憧れてる女子は決して読んではいけません。
子供には受け入れがたい現実が次々に描かれ、理解を超えてしまうからです。
というか大人でも理解するのは難しいかも知れません。
それもそのはず、宮崎駿という人は、日本でも数少ない本物の「知識人」だからです。

インタビューをいくつか読めば分かりますが、宮崎駿は、民俗学、宗教学、政治学、経済学、社会学、建築学、物理学、その他のありとあらゆる学問に精通した人物です。
そんな人が「子供向けのアニメを作りたい」ということでスタジオジブリを立ち上げ、皆さんもよくご存じの傑作を生み出しているんですが、この『風の谷のナウシカ』の原作を知っている側からすれば、なぜ宮崎駿ほどの人物がそんなことをしているのか分からない。
なんで子供向けなの?
よりによってあなたがそんなことしなくてもいいでしょ?
と、
恐れ多くもそのように感じてしまいます。
これは私個人の感想ですが、同じように思ったらしいロッキング・オンの渋谷陽一氏が『CUT』の取材時に「大人向けは作らないのか?」と執拗に訊いてます。そういう種類の表現欲とか、抑圧とかは無いのかと。
ところがミヤさん「全然感じません」とあっさり否定。
うーん。
まあでも、本人がそういうんだから、しょうがないですよね。
漫画「ナウシカ」をアニメでやるのも不可能だし。

若干話が逸れましたが、そういうわけでこの漫画版『風の谷のナウシカ』、壮大です。個人的には『火の鳥』をある面で超えたと思っています。
民俗学、社会学、宗教学など、宮崎駿のありとあらゆる知識と解釈が総動員され、異常なほど綿密な世界観が構築されています。さらに構築するだけではなく、その土壌の上に人が立ち、動き、笑い、泣き、「知識」のみでは成し得ない、「大いなる結論」へと巨大な物語がうねるように進んでいきます。
これが興奮でなくて何であろうか。

演出やキャラの描き方は普通です。というか宮崎駿はアニメーターの職人なのでコマ割りなどの概念が薄く、特にマンガ的手法に対して素人だった初期の頃は、マンガというよりは「手の込んだ絵コンテ」みたいな箇所が見受けられます。もちろん連載が進むに従って徐々に漫画的表現を獲得していくのですが、そういった意味で「演出」などに楽しみを見出すタイプの作品ではありません。あくまで「物語」および「思想」が主体です。というかそれが全てです。

前述の「大いなる結論」が何であるかは、実際に漫画で体験して下さい。もはや神々しささえ感じる物語のラスト、それを読み終えた後のあなたはきっと、これまで味わったことのない読後感に包まれて頭がぼうっとするに違いない。
事実私がそうでした。
この物語は「漫画」というジャンルで括られるべきではない。おそらくまだ誰も提示していない、「世界」についての大切な答えを見出しているように思うのです。
ああ、偉大すぎる。
ちなみに本作、私の「無人島に持って行く5作」のうちの一作です。

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