最終兵器彼女 / 高橋しん

最終兵器彼女(1)
ストーリー star4
キャラ star4
絵の魅力 star4
演出 star4
個性 star5
中毒度 star5
おすすめ度
(総合)
star5

今回のおすすめ漫画は高橋しん『最終兵器彼女』、全7巻。
いつものようにレビューするにあたり読み返しましたが、目の周りがまだカピカピした状態でこれを書いています。
うええええん。

『最終兵器彼女』を語る前に、いわゆる「セカイ系」の説明をしておきます。以下wikiより抜粋。

セカイ系…「主人公(ぼく)とヒロイン(きみ)を中心とした小さな関係性(「きみとぼく」)の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、『世界の危機』『この世の終わり』(これらについては後述する)など、抽象的な大問題に直結する作品群のこと」

『最終兵器彼女』はこの「セカイ系」の代表作なんですね。
何しろ世界規模の戦争が勃発しているにも関わらず、その原因、進捗、世界各国の状況は何一つ読者に知らされず、描かれるのは主人公の二人と、その周囲に起こる出来事のみ。ようするに訳が分からないまま街が破壊されたり、空襲を受けたりしてる状態。これはもう思い切った構成というか、ちょっとあり得ないくらい閉じた物語です。
こんな漫画、落合信彦センセーなら失笑もんです。
がしかし。
これはもう世代的なものだと思うんですが、ある一定の世代以降は、この極端な舞台設定をすんなりと受け入れることができると思うんですね。だからこそこの作品がここまで評価されてるわけで。
つまり国家や共同体から切り離された世代が、この物語に一定以上のリアリティを感じることが可能であると。
主人公二人の気持ちが全てであると。
この「閉じまくった舞台設定」について、作者もあとがきでこういう風に言ってます。

「二人の恋だけが、全てです。正しい正しくないなどは、意味を持たないし、リアリティーなど、ただ、それのためだけにあればいい」

どうですか。
素晴らしいこの言い切り。見事です。
確かに物語の描写内に言い訳めいたところは無く、気持ちいいくらいに閉鎖的です。でも私は思うんですが、結局、人間ってそういうもんじゃないのかなあと。
世界がどうあれ、状況がどうあれ、一番大切なのは自分と自分の愛する人であって、それ以外は目に入らないというのが我々の姿なんじゃないでしょうか。

『最終兵器彼女』という物語、特筆すべきはそれだけではありません。エロいです。いや、エロいというか、生々しいのです。エロの生々しさは死や生の生々しさでもあります。人が死ぬシーン、簡単に流せる程度のものこの漫画には出てきません。一つ一つが重いです。こたえます。セックス描写も、殺人も、それぞれに体温が感じられるのです。
特に性描写については作者もこだわりがあったようで、「ごまかしたくない」という思いがあったそうです。もちろんその判断は成功していて、性描写がなければ私のあれほどの感情移入は無かったでしょう。
いや、目の周りカピカピって言ったでしょ?
三十路を過ぎて、恥ずかしい話ですが。
もとい、本来性描写とはこういうものを指すんです。単純な青少年のオカズではなく。誇張されたフィクションではなく。本当に私たちが知っている、人には話さない、恋人同士の、嫌なところまでも含めた人間の営みとして、描かれるべきだと思います。チンコ勃ちながら泣く、みたいな。
私は特に「ふゆみ先輩」がお気に入りです。身に覚えがあります。ああいうエロは危険だ。

『最終兵器彼女』は「シュウジ」と「ちせ」という恋人二人のことだけを、真正面から描き切った恋愛漫画の傑作だと思います。それも決して大人の恋愛ではない、10代の、甘酸っぱい記憶と共に思い起こされる、あの世界観です。
これがただの恋愛漫画に終わっていないところは、先に挙げた「セカイ系」の設定と共に「彼女」が「最終兵器」であるというところですが、実はこれ、別に彼女が最終兵器じゃなくても描けると思うんですね。
地味にはなりますが、決して不可能ではない。
つまり、この作品は奇をてらって売れたわけではなく、本当に大切なことをしっかりと描けているんです。
タイトルと設定だけ見て、色モノだと思って敬遠してる人。
あなた損してますよ。
全7巻、すぐ読めるのでぜひ読んでみて下さい。
ハンカチ用意してからな。

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