PLUTO / 浦沢直樹

PLUTO(1)
ストーリー star4
キャラ star4
絵の魅力 star4
演出 star4
個性 star4
中毒度 star4
おすすめ度
(総合)
star4

今回のおすすめマンガは浦沢直樹の『PLUTO』、全8巻。 ランキングつけてみたら偶然オール☆4になりました。珍しい。
私は手塚世代でも戦後焼け跡派でもありませんので、「アトム」という名前に何の思い入れも無いわけですが、そういう人間がこれを読んでも面白いのかと言うと、面白いです。
あー面白かった。

この『PLUTO』という作品はアトムの「地上最大のロボット」が原作ですが、元ネタを完全に再現するでもなく、まるで別物にリメイクするでもなく、ほどほどの良い距離を保っているようで、その時点で既に名作の条件を手にしていると言えます。
これは『PLUTO』に限った話ではありませんが、「遂に○○が待望の映画化!!」とか「あの名作がオリジナルアニメで甦る!!」とかね、まー皆さんこれまでそういうの見たり読んだりしてると思いますが、どうですか? ロクな経験してないでしょ?
私自身、もうやめてー!みたいなことが沢山ありましたので、基本的に「元ネタ」がある作品には手を出さないようにしています。どうしても気になったら原作の方読むしィー。

ところが中には元ネタがあっても、ファンの期待を裏切らず、なおかつ新しい解釈、新しい要素で楽しませてくれる奇跡のような作品が存在します。
私基準ですが、それには二つのルールがあると思います。一つは、元ネタと作者が同じである場合。つまり小説家自身がメガホンとったり、監督本人がノベライズしたり、音楽だとセルフカバーってやつですね。これは作者が同じで「表現方法」だけ異なるというパターンですが、そうして制作されたものにはハズレが少ない気がします。
そして二つ目は、原作とほどほどの距離を保っていること。
原作に忠実になりすぎてオリジナルの要素が皆無だと「だったら原作でいいじゃん…」って思うし、原作の設定無視でオリジナルに走りすぎると「これは原作レイプだ! お前らの要求は何だ! 金か! 結局金がほしいのか!」となるわけです。

ところがこの『PLUTO』、さすが大御所の浦沢先生です。委ねどころ、主張しどころ、落としどころを心得てます。一読すればこれが手塚マンガだとは誰も思わないでしょう。完全にいつもの「あの」浦沢作品です。これでまず第一の条件クリア。新しい浦沢作品が読める、すなわちこの作品を描く意義があるってことです。

余談ですが、ここ数年の浦沢直樹はすごいですね。
ベテランですが、読者を魅了するコツをさらに掴んだのだと思います。サスペンス的な物語の運びが非常に巧い。思わせぶりぶりです。ちょっとやり過ぎな感じはあるにせよ、力業でグワーッと引き込まれます。
てか、たぶんそれこそがここ最近の浦沢作品の楽しみ方だと思うのです。逆に、そういう物語が嫌いな人には全然向いてない。まあそういう人はあんまりいないと思いますけど。

この『PLUTO』の最大のキモは、原作で脇役だったゲジヒトというロボット刑事を主人公にしているところでしょう。それが最大のファインプレーだと思います。そうすることによって今作は強いアトムの活躍ではなく、人間やロボットの「感情」に焦点をあてた、完全に大人向けの内容になっています。
これで第二の条件もクリア。
つまり「異なる解釈で描かれたアトム」という存在意義が生まれている。原作をトレースするでもなく、無視するでもなく、違った角度から切り込み、原作世界をより深いものにしているわけです。

以上の二点をもちまして、わたくしkatagami、『PLUTO』を良質のリメイク作品であるとここに認定いたします。
わーわーパチパチ。
そう言えば全8巻というボリュームも、マンガを読む時間があまりない大人向けです。
「アトム」に興味ある人も無い人も、どんな世代の人もぜひ一読してみて下さい。
なんて、
そう言えることこそ、良質のリメイク作品の証ですね。

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