おひっこし / 沙村広明

【送料無料】おひっこし
ストーリー star4
キャラ star4
絵の魅力 star4
演出 star4
個性 star4
中毒度 star4
おすすめ度
(総合)
star4

今回のオススメ漫画は『無限の住人』の沙村広明が描いた短編集『おひっこし』全1巻。
もちろん私は『むげにん』の大ファンですが、あっちが時代劇なのに対してこっちは現代劇。ところがこの作者、さらりと描き分けています。上手。
何が上手なのかというと、距離感ですね。時代劇と現代劇の距離。作者とキャラクターとの距離。現実と漫画世界の距離。バランスのとれた心地良い距離感にやられます。話のテンポがすごくいいし、寄るところは寄る、引くところは引く、読者は作者の上手な誘導によってあれよあれよとマンガワールドに引き込まれてしまう。
表題作『おひっこし』はベタなラブコメですが、ふざけた箇所と、真顔になるシーンが、実に絶妙のバランスで組み合わされています。どこまでふざけていいのか、どこで真剣にやればいいのか、作者はしっかりと心得ている。そのセンスと言語感覚に脱帽です。

そのほかに特筆すべきは、やはり沙村広明という漫画家の画力でしょうか。絵柄の好き嫌いはあるでしょうが、私の好みストレートど真ん中です。最高です。この人が描く男のかっこよさと女の色っぽさがたまりません。単純に絵だけを見て、惚れ惚れすることも多々あり。
(ちなみに同作者のモノクロ画集『人でなしの恋』『ブラッドハーレーの馬車』はエログロすぎるので一般の方にはお勧めしません。逆にアブノーマルな方にはお勧めします。特に画集の方は女性の「責め絵」ばかりが美しすぎるモノクロームトーンで描かれるという、氏の真骨頂のような画集ですが、エロいしグロいので、やっぱり一般の方にはお勧めしません)

そういうことでこの作者、一歩間違えれば変態の領域に簡単に踏み込んでしまうメンタリティを持っています。まあそこが何よりの魅力で、『無限の住人』にしても、普通のマンガを読む時のような安穏とした気分(ヒロインは死なないだろう、アンハッピーエンドは無いだろう的なアレ)は通用しません。
残酷な日常も、禁忌の愛も、この作者は平等に描きます。だから読み手は常に緊張する。
なので、そんな世界の入門編として、この『おひっこし』はおすすめです。沙村広明ワールドのおいしいところをつまみ食いできる感じ。『おひっこし』は内容も軽いし、エロもグロもないし、軽い気持ちで読めるでしょう。
あと、表題作の他に収録されている『涙のランチョン日記』も秀逸で、私はこっちの方が好きだったりします。

ということで沙村広明『おひっこし』。
画力を裏切らないストーリーと、ストーリーを裏切らない会話の妙。その良バランスを楽しんでみて下さい。

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