シスタージェネレーター / 沙村広明

シスタージェネレーター
ストーリー star5
キャラ star5
絵の魅力 star5
演出 star4
個性 star5
中毒度 star4
おすすめ度
(総合)
star4

今回のおすすめ漫画は沙村広明の短編集『シスタージェネレーター』全1巻。前回ご紹介した同作者の『おひっこし』から7年ぶりの短編集となります。
ページを開いてみて思ったのは、意外にも画力がさらに上達してるということ。キャラの線がさらに繊細になっているように思います。私的には、もうこれ以上の画力は求めません。相変わらずうっとりします。壁に飾って眺めていたいレベルです。
この作者の詳細については『おひっこし』の記事を参照して頂くとして、今回の短編集は前作以上に沙村色が強くなったというか、ギャグのベクトルとシリアス(変態方面)のベクトルが作品によって様々に現れているという、なかなか読み応えのある内容となっています。沙村広明を知らない読者がこれを読むと、氏の作風(主に性癖)のだいたいのニュアンスが掴めるのではないでしょうか。

本作には6つの短編が収録されていますが、その内訳は変態の話、青春劇、SF、西部劇、エッセイ風、時事ネタ、西洋劇など様々なジャンルに分かれています。
驚くべきことは、作者はそれらをすべて等しい目線で描き、しかもそれが違和感なく読めてしまえるという点です。これは何気にすごいことだと私は思います。器用というべきか、無責任というべきか。ともかく収録されている多彩な物語のうち、不満を覚える作品は一つもありませんでした。すべてきっちり楽しめました。やはりこの作者、漫画のツボを心得ています。

短編はどれも面白かったんですが、やはり『久誓院家最大のショウ』と『エメラルド』が秀逸であったように思います。どちらも女性が非常に格好良く描かれていて、氏の「責められる」側の女性しかあまり見たことのなかった私には新鮮でした。この作者、こんな風にも描けるのか…と感心しきり。
特に、登場する女性の色気と冷徹さにゾクゾクしました。こんな感覚、他のマンガでは絶対に味わえません。Sな私でさえ魅力を感じるので、Mな殿方が読めば一発で虜になってしまうんじゃないでしょうか。

沙村広明という作家は、『シスタージェネレーター』に限らず他の作品においても常に「性」の匂いがつきまといます。しかしそれはもちろん「売れるためのパンチラ」「読者サービスの裸」みたいな安っぽいものではなく、完全に文学の領域、人間が回避できない本質的なエロスとして描かれています。
(作者がそれを自覚しているかどうかは分かりませんが)
この作家は女性の身体や足を描くのが本当に巧いと思いますが、さらには精神的なエロ、魂の上下関係、支配と隷属の関係を描く力にも秀でており、その肉体を描く画力との相乗効果で、酔いしれるようなシーンを見せてくれます。
その時、「性」は「物語」と密接に関連します。
「性」を無難に避けたり、あるいは逆に利用したりするマンガ家や編集者は大勢いると思いますが、そんな中でも沙村広明の描く「性」だけは本物であると私は思います。

とは言うものの、氏の他の作品に比べると『シスタージェネレーター』はライト級の内容なので気軽に読めます。前回の『おひっこし』同様、本作もまた沙村ワールドへの入門書といったところでしょうか。
ただし入門書だからといって、その「質」まで軽いわけではありません。
その点、ゆめゆめ誤解無きよう。

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